oppen epoch Miracle Coach Cream(ミラクルコーチクリーム)

オッペン化粧品株式会社 代表取締役社長 瀧川 照章

We Challenge

2020年、新型コロナウイルス感染症の発生により世の中の生活スタイルが激変したことは、誰もが実感していることと思います。
当然、化粧品業界にも激震が走り、弊社も少なからず影響を受けました。

「化粧品メーカーとして、そしてオッペンとしてできることは何か。何かを変えなければ」
という強い思いがあったものの、答えの見つからない日々。
そんな時に、ミラクルコーチクリームの容器製造を依頼している取引先から、容器の製造ができなくなるという連絡を受けました。

ミラクルコーチクリームは、1963年の発売当時、「魔法のクリーム」と呼ばれ、オッペン躍進の原動力になった商品です。現在は販売数もそれなりとなり、自社には他にも類似する商品があるため「容器が製造できないのであれば、販売中止にしていいのではないか」という声もありました。しかし、先人が心を込めて作り、大切な人に販売してきた商品です。58年間も愛されてきたことには意味がある。そう考えた私は、販売継続の判断をしました。
混迷の今こそ見つめ直しなさいという、創業者からのメッセージではないかと感じたからです。私はここで思い切って舵を切り、ミラクルコーチクリームの全面リニューアルを通じて、新たな世界観をお客さまへ提供しようと決断しました。

内容物のクリームは販売員の意見を集約して、よりすばらしい魔法のクリームになるよう全社を挙げて開発を進めました。
容器のデザインは、これまでにない、まったく新しい発想でいきたいという思いから、「公募にすれば斬新なデザインが生まれるのでは」と考え、未来を担う学生にデザインを託すべく、産学連携のチャレンジをスタートさせました。

オッペン化粧品株式会社 美容戦略部 部長 池田 弘美

1長年の販売現場の経験を活かす

30年にわたる販売現場の経験をもとに、現在ミラクルコーチクリームを使用されているお客さまはもちろん、まだ使用したことのないお客さまにも喜んでいただけるものを作りたいと考えました。
以前、子どもが怪我をした時に処方された治療薬として使っていたEGFに着想し、肌のもつ力をサポートする成分を取り入れたいと考えました。

また、使用感ではミラクルコーチクリームがもつ重厚でリッチな感触は残しつつ、なじみが良くうるおいが持続するテクスチャーとさわやかな香りを要望として技術統括部に伝え、何度もテストを繰り返しました。そして、社内や販売現場でサンプルを試してもらった結果、高評価を得ることができ「これなら大丈夫。このクリームで行こう!」と商品化に至りました。

オッペン化粧品株式会社 技術統括部 部長 吉武 裕一郎

2重圧に負けない

処方開発においては、内容物のクリームをさらに進化させるため、「いままでにないうるおいの持続力」をコンセプトに肌なじみがよく、かつ長時間保湿するクリームの開発をスタートさせました。

「他社の商品にはないものを作ること」「コンセプト通りのものを作ること」「歴史のある商品のリニューアルであること」の3つの重圧に加え、心地よいテクスチャーを叶えるためさまざまな苦労がありました。配合する成分や処方に工夫を凝らした結果、従来に比べ約4倍の保湿力を実現。乾燥しがちな肌をしっかりと保湿し、重厚ながら心地よい使用感とすぐれた肌なじみによる高い密着力を両立させることができました。

香りはグレープフルーツを基調としたさわやかな香りに、ローズゼラニウムのアクセントを効かせ、お客さまにも販売員にも満足していただけるものを完成させることができ悦びを感じています。

オッペン化粧品株式会社 美容戦略部 廣瀬 芳昭

3今までにない容器の開発

容器のデザインはデザイナーへの依頼、Web上でのコンペ、産学連携の3案で検討しました。産学連携での商品化成功率は3割程度と言われています。社内からは不安の声もありましたが、未来を担う学生によるこれまでにない新しい発想を求め、大阪市立デザイン教育研究所に依頼したところ、学生から70作品もの応募がありました。

多数の応募があり嬉しいのも束の間、70作品からどれを選定するかという難題に突入しました。まずは各部署からの投票で候補を数点に絞り込み、その中から使いやすく、ご愛用者及び新規のお客さまにも気に入っていただけるものはどれかと検討を繰り返しました。

ようやくデザインが決まりかけたものの、ふと無難なデザインに落ち着いてしまっているのではないかと気がつきました。世界観の刷新や新しいターゲット層の獲得のためには、これでは駄目だと一転、常識を覆す斬新なデザイン「プリンセスドレス」を採用することに決定しました。ところが容器設計のスタートから壁が立ちはだかりました。化粧品容器専門の金型を作っている9社に打診したものの、プリンセスドレスのデザインをそのまま再現することは難しく、どの企業でも課題が残りました。

途方に暮れている時に、大阪市立デザイン教育研究所の先生からこのデザインを具体化できるのでないか、と企業をご紹介いただきました。こだわり抜きたい商品だからこそ、今まで依頼したことのない企業でチャレンジするべきだと考え、ご紹介いただいた株式会社ダイプラの森田社長にお願いすることにしました。

大阪市立デザイン教育研究所 学生 青木 小夏

4産学連携

オッペン化粧品さまから大阪市立デザイン教育研究所に商品リニューアルに伴う新デザイン募集のご案内をいただき、授業の一環としてコンペに参加しました。「ミラクルコーチクリーム」の商品名から想像を広げ、「ミラクル=魔法をかける」というイメージに行きつきました。

「魔法 × 美しい」をメインテーマに「苦難の中にあるシンデレラが、元からある内面の美しさを損なわずに、魔法によって外見までもさらに美しくなる」という老若男女を問わず、誰もが知るストーリーをこの商品で体験してほしいという思いと、魔法にかけられてさらに美しくなったシンデレラのように、このクリームを使えばそれぞれが潜在的にもつ美しさがさらに引き出されることをイメージしてデザインを考えました。

コンペの結果、70作品もの応募の中から私の案が採用された時はとても驚きました。プリンセスドレス案の採用が決まった後、デザイン教育研究所内でチームを作ることになったのですが、仲のいい友達ではなく、このデザイン案を商品として形にできるメンバーを集めました。デザインを具体化させる中で、身に染みて感じたのはチームで物事を進める大変さです。

特に私は自分の意見に固執してしまうところがあり、自分の意見を通しすぎるとチームがまとまらず、意見がぶつかり合うこともたくさんありました。

また、経験豊富な社会人の方々と仕事をする難しさも感じました。今思えば、デザインが採用されてからは相当なプレッシャーがありました。一時期は心がぐちゃぐちゃになることもありましたが「学生の特権を活かして、思い切ってやってほしい」と瀧川社長におっしゃっていただき、前を向いて開発を続けました。

株式会社ダイプラ 代表取締役 森田 吉彦

5オール大阪で開発

企画をうかがったときから、これを完成させるには役割ごとに複数の企業の協力が必要だということを瀧川社長に伝えました。デザインを担当する学生の皆さん、量産製造は株式会社ダイプラ、薔薇の彫刻は赤坂金型彫刻所、採色はオーケー化成株式会社、モックアップは株式会社内外、材料調達は扇化工材株式会社、金型は株式会社CUBE、というオール大阪のプロジェクトチームを組んで進めていくことにしました。

まず、学生の皆さんには造形や製造工程について説明し、工業デザインの基礎を理解してもらうことからスタート。プリンセスドレスのデザインを学生チームとともに立体に起こし、3Dプリンターで検証を重ねました。容器の容量やドレス部分の調整には大変苦慮しました。
学生の皆さんや複数の協力企業と連携していくことに苦労しましたが、結果、納得のいくものができ、やりがいと達成感を感じました。

赤坂金型彫刻所 代表 三代目赤坂兵之助

6彫刻は、最後のピース

最初の課題は、お互いの頭の中にある「理想の薔薇」を理解することでした。
「何をもって良いデザインなのか」「何をもって美しいとするのか」。想像している「理想の薔薇」は十人十色で正解がない。決まりかけると別の方からイメージが違うと意見が出て、振り出しに戻る。そんなことを繰り返しながら、プロジェクトのスタートからおよそ1ヶ月。

チーム内でのイメージがまとまってきたところで、私に最終デザインが託されることになりました。造形の変化量など手探りでしたが、チームの思いをイメージしながらベストな彫刻を完成させられたと思います。出来上がった商品を見て、思わず涙が溢れました。苦労してきたことが花開いた瞬間でした。

オーケー化成株式会社 浜辺 久美子
荒張 伶奈

72万色からカラー選定

まずはプラスチックの種類によって色の出方や見え方が変わることを学生の皆さんに理解してもらうことからスタートしました。初回の打ち合わせ時には、まだ学生の皆さんの中で完成形のイメージが定まっておらず、正直心配になりました。

それが2回目の打ち合わせではイメージがしっかりと固まっており、本当に同じ学生なのか疑ってしまうくらい、やりたいことが明確になっていたことに大変驚かされました。

店頭で真正面から見た時や通りがかりに見た時の見え方、実際に自分たちが買う立場になった時やドレッサーに置いた時の見え方まで考えて作り込んでいました。そして上や横からだけでなくさまざまな角度からカラープレートを見て約2万色の中から5色を選定。一番印象的だったのは、学生の皆さんが「ミラクルコーチクリームの伝統を残しつつも既存イメージを変えること」を強く意識していることでした。

大阪市立デザイン教育研究所 学生(左から)赤松 佐助、青木 小夏、森脇 ひなた、井元 菜乃

8プロ意識を知りました

プロジェクトが進むにつれて、さまざまな困難がありました。「工業デザインとしては成り立たない」「パーツが多くてコストがかかりすぎる」などプロの方々からの意見がありチーム全員でとても悩みました。図面がほぼ完成し、商品のイメージを決定づけるカラー選定を行なう段階になり、いろいろな角度からの見え方について話し合い、時にはチームの中で意見がぶつかることもありました。

プラスチックという素材や化粧品ならではの制限をクリアし、新しい容器デザインの世界観にマッチする5色を2万色の中から選定。サンプルを作り、その中からベストな1色をオッペン化粧品さまに選んでいただきました。製造工場で商品化されたものが、初めて金型から成形されて出てきた瞬間はチーム全員で感動しました。光り輝く黄パールに繊細な薔薇の彫刻が施された容器は、自分たちがデザインした以上の表現で感激でした。何度も何度も悩み、苦労してきた思いが一変し晴れやかな気持ちになりました。

どう対応すればいいのか迷う中、時に優しく、時に厳しく、皆さまにご指導いただき、困難を乗り越えていく中で少しずつ自分たちの思いが形になるにつれて「これが仕事なんだ。苦労してよかった」と、心から思うようになっていきました。
商品を完成させるには「正解はない。答えはチームで導き出す。」ということを学びました。携わっていただきました皆さまに心から感謝しております。

オッペン化粧品株式会社 取締役 山田 次夫

9未来を託す

ミラクルコーチクリームの歴史は長く、10周年(1963年)の時に基礎化粧品シリーズの一つとして発売されました。肌をなめらかに整える「ミラクルなクリーム」として評判を呼び、香炉を思わせる容器も好評を博しました。オッペンを大きく発展させる原動力となり、会社のイメージアップにも貢献した商品です。その経緯があり、従来のものから新しいものへ変更するのは難しいと感じていました。ベテランはついつい口を出してしまいがちですが、それでは若い人が持つ感性の芽を摘んでしまうことになる。特に容器デザインに関しては、若い人の新しい意見に寄り添うことに決めました。

まさかこのデザインになるとは、常識では到底考えられない容器でしたが、でき上がってきた時は本当に感動しました。ミラクルなクリームの仕上がりもよく、社員が誇らしく見えたと同時に将来に期待が持てると確信しました。制作にご協力いただいた社外の皆さまありがとうございました。

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※香りは精油によるものです。
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